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日本音楽史:アレンジャー&写譜屋&ミュージシャンの関係

レコーディングにおいて、作詞・作曲が終わったらいよいよ音録り。
編曲者(アレンジャー)と写譜とスタジオ・ミュージシャンは綱渡りでレコーディングをする。
その後もミキサー、マスタリング、CDのグラフィック、プレス…と続くのだが、レコーディングは心臓部です。

ここで少し説明がいるのが「写譜」です。
令和の現代はほぼ99%が楽譜ソフトでアレンジもされてそのまま出力ができる。
昭和時代(洋楽・邦楽ともに全盛期)は、手描き。人海戦術で乗り切っていた。
専用の写譜ペン(万年筆)で描いたものが各パート譜となり、昔の歌本は写譜楽譜と手描きの歌詞だった。80年代くらいから徐々に変わって来たが、業務用と写植に置き換わり、パーソナル・ユースでは平成になってから徐々に浸透してきた。
音楽の分野だけでなくて、印刷業界でも原稿を人が写植で仕上げる時代だった。
今はすっかりPCのテキストデータで進行していますね。

仕事内容としては、アレンジャーが編曲した手描き譜面(例えば16段スコア)をパート毎に見やすく楽譜にする仕事。
後術するが手描き写譜には“愛と優しさ”がある。演奏者が演奏しやすい様な配慮が成された並びや音符の行間。これで、演歌・歌謡曲・ニューミュージック音楽産業の全盛期が随分救われた。
スタジオ・ミュージシャンも分単位の仕事だったとか。あちらのスタジオからこちらのスタジオに仕事が重複していて、全てが綱渡り。

写譜と手書き文字(昭和)

アレンジャーの仕事も随分大変なのだが、ここでは割愛しよう。
最近、アレンジャーの先頭を切っていた萩田光雄氏と船山基紀氏の本が出ている。
当時のドタバタがいっぱい掲載されていて面白い。
更にミキサー(エンジニア)の先頭を切った吉野金次氏も本を出していたり、本人と何度も会っているので、当時のすごいエネルギーを共有している。
それぞれの技術屋が結集して、レコード・CDが世に送られていたのです。

★参考

『ヒット曲の料理人 編曲家・萩田光雄の時代』
萩田光雄


『ヒット曲の料理人 編曲家・船山基紀の時代』
船山 基紀

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■写譜会社「Hustle Copy」

この後は上記に並んで昭和で活躍したアレンジャーMr.Aさんとの話を少しまとめてみます。



Mr.A
「僕は今でも原則写譜屋に頼みますよ。ただ、以前たくさんあった写譜屋さんは数人の技術屋が起こした1社に絞られました」
「アレンジをスタートした当時、24時間いつでも良いので電話下さいと写譜屋さんから名刺をもらう」(当時はケータイは有りません。おそらく自宅兼事務所)
「深夜に電話すると、寝ぼけた声で相手が出ます」
「ほんとに24時間良いの?と思った。」
「大丈夫、今から取りに行きますというので、お願いしたらタクシーで来た。確かに深夜は交通機関無いし。今考えるとけっこうなギャラが出ていたんだろうなぁ」
「夜中に前半部分を渡し、朝までアレンジして仮眠してスタジオに行く」
「スタジオには写譜屋さんが待っていて、前半の写譜ができあがっている」
「後半のスコアを渡すと、ギリギリに写譜した楽譜を録音前に持ち込んでくれました」
…

こういったやりとりが毎日365日、何年も続いたそうです。
その当時はアレンジャー・写譜屋・ミュージシャンが三位一体で仕事をしていた。
ミュージシャンをブッキングするインペグ屋という人もいた。
スタジオには当然、レコーディング・ミキサーもいてフル稼働状態。

Mr.Aさんが今でもPCでは無くて写譜屋に出す理由としては、
譜面上の気が効いているということ。
ミュージシャンは初見演奏が多いので、迷わないようになるべくやさしい譜割にしてある。
※ロングトーンでも単に付点なのか、理解しやすい音符をタイでつなぐのか同じ長さでも違います。
あと手描きなので、音符と音符を詰めたり離したりできるので1拍の演奏か2拍の演奏かなどがまとまって音符に表示され感覚的に分かります。


●写植と専用ソフト

さて、昭和も少し時代が進みます。
Mr.A「その後、時代が進んでFAXができた。」
アレンジャーやミュージシャンの仕事は変わらないが写譜屋は随分便利になったそうだ。
できたてほやほやの譜面が取りに行かなくてもすぐ入手できるから。

現代は、PCで譜面やら打ち込み音源やら、新時代はAIボーカルや音楽の中身のコンテンツ(自動演奏/ジャンル/フィル等)まで入り込みました。
あと音楽ソフトで打ち込んだら自動的に楽譜になったり、逆に楽譜を作ったら自動演奏してくれるなど、便利な時代に成りました。


●PCソフトの譜面

しかし、それぞれのスキルはいつの時代も変わらないということです。
形の無い、目に見えない芸術=音楽だけに感性が重要ということです。

by KURA

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