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ロジャー・グローヴァーの広大な謎人脈

“ファンキーなピック弾きロック・ベーシスト”ジョン・ガスタフソンの動画を漁っているうちに発見した謎のライヴ映像。調べて分かったが、これはロジャー・グローヴァーがプロデュースしたコンサート『バタフライ・ボール・アンド・グラスホッパーズ・フィースト(以下“バタフライ・ボール”と表記』の様子だった。

1975年10月16日、ロイヤル・アルバート・ホールでの一大イベント。それに、イメージ映像やアニメ、着ぐるみの寸劇などを組み込んで映画化した作品。その大元は絵本『バタフライ・ボール』。ビートルズのソング・イラスト集、ザ・フー、エルトン・ジョンなどのアルバム・ジャケット等を手掛けた事で有名なアラン・オルドリッジが1973年に制作したこの書籍の音楽化というアイデアが立ち上がり、当初はピンク・フロイドに声が掛かったが断られ、当時は音楽プロデューサーとして活躍していたロジャー・グローヴァーに話が回ってきた。

素材がロジャーのお気に入りの作品だった事と、プロデュース業を通じて多岐に渡る人脈にも精通しており、1974年、多彩なミュージシャン達が集結してアルバム制作が行われた。シングル・カットした「ラヴ・イズ・オール」は大ヒット。翌年、このコンサートと映画化が実現した。

セットリストと担当ヴォーカルは以下の通り(※wikipedia.orgより引用)

1. Dawn (feat Vincent Price)
2. Get Ready (feat Glenn Hughes)
3. Saffron Dormouse and Lizzy Bee (feat Helen Chappelle and Barry St. John)
4. Together Again (feat Tony Ashton)
5. Old Blind Mole (feat Earl Jordan)
6. Magician Moth (feat Vincent Price)
7. Watch Out for the Bat (feat John Gustafson)
8. Aranea (feat Judi Kuhl)
9. Sir Maximus Mouse (feat Eddie Hardin)
10. Behind the Smile (feat David Coverdale)
11. Little Chalk Blue (feat John Lawton)
12. Waiting (feat Al Matthews)
13. Sitting in a Dream (feat Ian Gillan)
14. No Solution (feat Micky Lee Soule)
15. The Feast (feat Vincent Price)
16. Love is All (feat John Lawton a.o.)
17. Homeward (feat Twiggy)
18. Love is All (encore)

アメリカの名優ヴィンセント・プライスのナレーションの後、良く通るハイトーン・ヴォイスのグレン・ヒューズで幕を開ける『バタフライ・ボール』。第4期ディープ・パープルとして『カム・テイスト・ザ・バンド』がリリース直前の時期で、デイヴィッド・カヴァデールやイアン・ギランも登場し、当時の新旧ディープ・パープルのヴォーカリストが顔を合わせる形となった。
デイヴィッド・カヴァデールが本来の持ち味であろうブルージーで燻し銀の様なヴォーカルを堪能出来る。渋くて豊かで艶のある声だ。いつもと違うバンドとオーディエンスとの交流を心から楽しんでいる様で、こんなに笑顔でのパフォーマンスは意外。
一方、ミュージシャン業をリタイア中だったイアン・ギランは、アルバムで歌ったロニー・ジェイムズ・ディオの代役として登場。珍しくミドル・ヴォイスとファルセットを行き来する繊細な歌唱を聴かせた。少々ピッチが不安定なのが残念だが、歌い終わった後には壮大なスタンディング・オベーションが待っており、それが収まるまでヴィンセント・プライスは予定されていたナレーションを待機せざるを得なかったそうだ。

ヴィンセント・プライス以外もアル・マシューズというブルックリン出身の俳優も出演。しかもリード・ヴォーカルの一人としてパフォーマンスした。純朴・素朴な歌いっぷりが聴き手の心も熱くする。
アール・ジョーダンという異色のシンガーも登場。ビッグ・ジム・サリヴァン、リッチー・ブラックモアやイアン・ペイス、トニー・アシュトンらが別名でレコーディングした覆面バンド<グリーン・ブルフロッグ>のリード・ヴォーカルを担当した事でロジャー・グローヴァーとの繋がりが出来たのだろうか。面白い事にwikipedia.orgには「Additional members included Liz Mitchell, later front woman with Boney M., and John Lawton, who also sang for the German progressive/hard rock band Lucifer's Friend and would go on to be the frontman for Uriah Heep. 」とある。後で紹介するジョン・ロートンもメンバーだったLes Humphries Singersというグループに当時は参加していたのだ。


※左からヴィンセント・プライス、アール・ジョーダン、アル・マシューズ

女性のヴォーカル陣も異色揃い。写真は左からヘレン・シャペル?(Helen Chappelle)&バリー・セント・ジョン、ジュディ・クール?(Judi Kuhl)、そして当時26歳になるかつての“ミニスカートの女王”ツイッギーも歌手としての面を見せた。
※有名なヘレン・シャピロのスペルは“Helen Shapiro”で別人

ジョン・ロードと共作した人という位しか知らなかったトニー・アシュトン。こういう芸風だったんだ…。煙草にむせて咳き込むのも演技なんだろうな。『ラスト・ワルツ』に登場したドクター・ジョンみたいにコンサートの中のコミカルなアクセントになっている。一緒に映っている盟友ジョン・ロードも微笑ましく見守っている。この二人が初めてコラボしたのは前年1974年。

他のキーボード陣も多彩だ。
エディ・ハーディン(写真左)は、スペンサー・デイヴィス・グループ出身でシンガー・ソングライターでもある。もう一人のミッキー・リー・ソウルは、エルフからレインボーに加入。バタフライ・ボール・ライヴの翌1976年にはイアン・ギラン・バンドのファースト・ツアー時のライヴ・メンバーも務めた。





さて、バンドの核となる中心メンバーは後のイアン・ギラン・バンドの構成員。写真左からレイ・フェンウィック、ジョン・ガスタフソン、そしてステージのあちこちを無邪気に動き回り、なんだかパリの芸人風のマーク・ナウシーフは当時22歳。ヴェルヴェット・アンダーグラウンド〜エルフを経て、今回はパーカッションで参加。これで、イアン・ギランとキーボードのミッキー・リー・ソウルを含めてI.G.B.のメンバー全員が揃った訳だ。バンド自体は1975年秋の結成という事なので、ひょっとしたら顔合わせも兼ねていたのか?
それと、ジョン・ガスタフソン繋がりで当時20歳のエディ・ジョブソン。ロキシー・ミュージックでの最後の参加アルバム『サイレン』をレコーディングした直後でリリースをほぼ1週間後に控えての参加。翌年にはフランク・ザッパのマザーズに加入する事になる。


※左からレイ・フェンウィック、ジョン・ガスタフソン、マーク・ナウシーフ、エディ・ジョブソン

リズム隊が最初は誰だか分からなかったが、判明した。
ベースはモ・フォスター。セッション・ミュージシャンとしてエリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ゲイリー・ムーア、シェール、オリビア・ニュートン・ジョン、シーナ・イーストン等々、様々なレコーディングやツアーに参加。
このRMS (Ray Russell - Mo Foster- Simon Pillips)というユニットが凄い!

そしてドラムは意外にもレス・ビンクス。そう、ジューダス・プリーストのツーバス・ドラマー。「エキサイター」の人ね。ある意味ヘヴィ・メタルのイメージ確立に一役買った人物とも言える。ロジャー・グローヴァーがプロデュースした『背信の門』のレコーディングに参加したサイモン・フィリップス。彼に替わる正規メンバーとしてロジャーがジューダスに紹介したのかと思ったら、レス・ビンクスはオーディションでメンバーに選ばれての加入だったそうだ。

今回、個人的に一番の収穫はジョン・ロートン。

上記の“アール・ジョーダン〜Les Humphries Singers”でも触れた人物。この『バタフライ・ボール』では、指揮者とオーケストラを伴った編成で朗々と歌い上げている。まさに極上のエンターテイナー。

いわゆるスタンダード・ナンバーを歌うシンガー?エンゲルベルト・フンパーディンクやアンディ・ウィリアムスみたいな…。しかし、そういったタイプと比べてキーが高い気がする。調べてびっくり。なんと、デヴィッド・バイロンの後任としてユーライア・ヒープに参加する事になるヴォーカリストだった。アール・ジョーダンのwikipedia.org↑にも“…Uriah Heep”と書いてあるじゃん。

ギャーーーーーーーー!!!
この衣装とメイクはキツいwww

ロジャー・グローヴァーはディープ・パープルを辞めてプロデュース業に専念出来た時期。一方、パープルからリッチー・ブラックモアが抜けてデイヴィッド・カヴァデールやグレン・ヒューズが割と自由に活動出来た時期。イアン・ギランは、ミュージシャン/パフォーマーとしての活動を停止して実業家としてスタジオの経営も行なっていた時期。彼のキングズウェイ・スタジオで『バタフライ・ボール』のレコーディングも行われた。ジョン・ロードはトニー・アシュトンの共演の後、長年の絆が結ばれた時期…。様々な人々のタイミングが奇跡的に合わさり、ロジャー・グローヴァーの人脈が最大限に行かされた運命的なプロジェクトだったのだ。

う〜ん…しかし
着ぐるみやアニメとか、演奏以外の映像は要らないなぁ…。

by Kay-C

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