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キング・クリムゾン|キース・ティペット‖エルトン・ディーン|ソフト・マシーン

ちょうど1ヶ月前の2020年6月15日、英国ジャズ/ジャズ・ロック・シーンを代表するピアニスト/作曲家、キース・ティペットが死去、享年72。
ー Keith Tippett, R.I.P. ー
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1960年代末期、アメリカではエレクトリック方面に進化を続けるマイルス・デイヴィスやマイク・マイニエリ率いる<ホワイト・エレファント>などが活動。一方、イギリスでもイアン・カー率いる<ニュークリアス>や<キース・ティペット・グループ>があった。

キング・クリムゾンは1698年に結成、翌'69年にセルフ・プロデュースによる『クリムゾン・キングの宮殿』でセンセーショナルにデビュー。しかし翌年にはロバート・フリップ以外(演奏メンバーが)全員脱退。その後しばらくの間は辞めたメンバーや新しく採用したミュージシャンと共に2枚のアルバム『ポセイドンのめざめ』『リザード』を制作した。バンドというより実質“ロバート・フリップ・プロジェクト”といった形態で、ライヴは実現しなかった。('70年3月、TV番組『Top of The Pops』では口パクで出演)
キース・ティペット・グループがマーキーに出演していた'69年頃、すでにクリムゾンのメンバーや、当時<サーカス>に在籍していたメル・コリンズ(sax,fl)は親交を持っていた。その縁でメル・コリンズが正式メンバーとしてクリムゾンに加入し、キース・ティペット・グループからは、ピアニストのティペット、コルネットのマーク・チャリグ、トロンボーンのニック・エヴァンスがゲスト参加。そしてクリムゾンの音楽にはジャズの要素がより多く加わっていく事になる。

キング・クリムゾン『リザード』

ロックからジャズに軸足を移したソフト・マシーン

同じくイギリス。1966年、デヴィッド・アレン(g.vo)、ケヴィン・エアーズ(b,vo)、マイク・ラトリッジ(key)、ロバート・ワイアット(ds.vo)により(ごく初期にはラリー・ノーランというギタリストも在籍)、サイケデリックなポップ・バンド<ソフト・マシーン>が結成される。しかし翌'67年にはデヴィッド・アレンが麻薬問題で脱退、キーボード・トリオになる。'68年のジミ・ヘンドリックスのツアーには前座として同行する事となり、一時期(後のポリスのギタリスト)アンディ・サマーズもツアー・メンバーとして参加していた。

1stアルバム『ソフト・マシーン』発表後にはケヴィン・エアーズが脱退し、ヒュー・ホッパーがベーシストとして加入。一気にジャズ・ロック・バンドへと変貌しつつあった。そして『ヴォリューム2』発表後の'69年末より、キース・ティペット・グループのマーク・チャリグ(cornet)、ニック・エヴァンス(tb)、エルトン・ディーン(sax)、そしてセッション・ミュージシャンのリン・ドブソン(sax,fl)を率いてツアーを行った。(※DVD『アライヴ・イン・パリス 1970』)そして、ブラス・セクションのメンバーの内、エルトン・ディーンが一人“正式メンバー”となり、アルバム『3(Third)』を発表。
完全にインスト・バンド化したソフト・マシーンは『4(Fourth)』では、ジャズ・ロックというより“ほとんどジャズ”と言っても良く、キース・ティペット・グループと一体化しており、同グループの2ndアルバム『デディケイテッド・トゥー・ユー』とも似た印象だ。

ソフト・マシーン『4(Fourth)』


キース・ティペット・グループ『デディケイテッド・トゥー・ユー』

ジャズ・ロック・バンドに変貌したソフト・マシーンにはジャズ・グループのブラス・セクションが必要不可欠になっていた。クリムゾンに在籍するメル・コリンズのような固定メンバーを欲しており、エルトン・ディーンのサックスはソフト・マシーンにとって“要素”以上の存在だった。
更には、エルトン以外のメンバーも正式メンバーに加えたかったようだが、契約の都合でそれは叶わなかった。しかし流動的な活動形態を取っていたソフト・マシーンは、ライヴ活動では彼らをゲストとして演奏に参加させた。マーク・チャリグにニック・エヴァンスそしてリン・ドブソン以外にもロニー・スコット(sax)、ネヴィル・ホワイトヘッド(b)や、『4』ではアコースティック・ベースを弾き、後のソフト・マシーンの正式メンバーになるロイ・バビントン、そして『5(Fifth)』参加のフィル・ハワードも正式メンバーになる前に一緒に演奏をしている。(※『『BBC in Concert』)ソフト・マシーンは要素の問題でなく音楽性そのもの、つまり“軸足”をロックからジャズに移したのだ。

また、ソフト・マシーン自体には参加しなかったティペットだがキース・ティペット・グループのセカンド・アルバム『デディケイテッド・トゥー・ユー』にはロバート・ワイアットやロイ・バビントンがレコーディングに加わっていた。

ジャズの要素を取り入れながらも、あくまでもロックを追求したキング・クリムゾン

ソフト・マシーンの“正式メンバー”となったエルトン・ディーンに対し、ロバート・フリップからのキング・クリムゾンへの加入要請を固辞したキース・ティペット。彼の弾く先鋭的なピアノは、あくまでもクリムゾン(ロバート・フリップ)にとってバンドの“要素”の一つに過ぎなかったのだろうか。いや、“音としての要素”だったかも知れないが、キース・ティペットからは想像以上に多くの学びがあったのだろう。ティペットと彼のグループの力も借りて混沌期を乗り越えた時、ドライでメタリックな『太陽と戦慄』('73年)という“ロック”の新境地を産み出した。それはティペットとの深い交流と、クリムゾンのリーダーであるロバート・フリップの強い信念があってこそだったはずだ。

キース・ティペットとロバート・フリップの絆

キング・クリムゾンの重要な“要素”としての参加依頼を頑なに断ったティペットは、もちろんクリムゾンの音楽やロバート・フリップとソリが合わなかった訳ではなかった。実際、ティペットのソロ・アルバム『ブループリント』('72年)や『オーヴァリー・ロッジ』('73年)はフリップがプロデュースしている。ティペットには、ブリティッシュ・ジャズ界を背負って立つリーダーの一人としての責任感のようなものがあったかも知れない。
ティペットは語った「クリムゾンとの仕事は、当時の私にとって最大にして最良の経験となった。無論、ロック・ミュージシャンとの初めての仕事だったわけだが、自分自身の音楽が広く通用する事を認識出来たし、お互いの意識の拡大と柔軟性が、全ての音楽を一つに融合し自由に創造出来る可能性を確信したのだから」センティピード『セプトーバー・エナジー』ライナー 市川哲史 より引用

さらに、フリップにクリムゾン加入を打診されるより前から“ジャズ組曲”の構想を持っていたティペットは、当時の恋人ジュリー・ドリスコール(ジュリー・ティペッツ)を通じてそのアイデアをフリップに告げていたのだ。フリップはティペットの構想に賛同し、『リザード』のレコーディング後には、遂にジャズ・ロック・オーケストラ<センティピード>を結成するに至った。

参加メンバーは<キース・ティペット・グループ>や<ソフト・マシーン>からキース・ティペット、エルトン・ディーン、マーク・チャリグ、ニック・エヴァンス、ロバート・ワイアット、<ニュークリアス>からイアン・カー(tp)、カール・ジェンキンス(oboe)、ロイ・バビントン、ジェフ・クライン(b)ら、<キング・クリムゾン>からロバート・フリップ、イアン・マクドナルド(sax)、ボズ・バレル(vo)、ヴォーカリストとしてジュリー・ティペッツやズート・マネーなど、さらに20名近くのストリングス…といった総勢50名を超える大所帯となった。
1970年11月15日、ロンドンのライシアム・シアターで初のコンサートを行い、その後フランス、オランダとツアーを回った。そして翌'71年には、2枚組アルバム『セプトーバー・エナジー』(フリップはプロデュースに徹し、演奏には加わらず)をレコーディングしたのだった。

・Wikipedia センティピード(バンド):https://ja.wikipedia.org/wiki/センティピード (バンド)
・Wikipedia Centipede (band):https://en.wikipedia.org/wiki/Centipede_(band)

◆キース・ティペット・グループのメンバー:参加アルバム
・キース・ティペット Keith Tippett(p) ※ゲスト
キング・クリムゾン『ポセイドンのめざめ』『リザード』『アイランズ』
・エルトン・ディーン Elton Dean(sax) ※正式メンバー
ソフト・マシーン『3』『4』『5』
・マーク・チャリグ Marc Charig(cornet) ※ゲスト
ソフト・マシーン『4』『5』
キング・クリムゾン『リザード』『アイランズ』『レッド』
・ニック・エヴァンス Nick Evans(tb) ※ゲスト
ソフト・マシーン『3』『4』
キング・クリムゾン『リザード』
◆アルバム制作の時系列順
・キース・ティペット・グループ『You Are Here..I'm There』1970年1月リリース
・ソフト・マシーン『3』1970年4月〜5月録音、6月リリース
・キング・クリムゾン『ポセイドンのめざめ』1970年1月〜4月録音、1970年5月リリース
・キング・クリムゾン『リザード』1970年8月〜9月録音、1970年12月リリース(英)
・キース・ティペット・グループ『デディケイテッド・トゥー・ユー』71年1月リリース
・ソフト・マシーン『4』1970年10月〜11月録音、1971年2月リリース
・センティピード『セプトーバー・エナジー』1971年6月録音、1971年10月リリース
・キング・クリムゾン『アイランズ』1971年10月録音、1971年12月リリース
・ソフト・マシーン『5』1971年11月〜197年2月録音、1972年6月リリース

Keith Tippett solo piano performance 13th Dec 2013- Conservatorio "Nino Rota"- Monopoli

by Kay-C

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