鈴木、脱退を決意
オフコースのシングルヒットの快進撃はつづく。1980年3月にシングル「生まれ来る子供たちのために」、6月にシングル「Yes-No」
を発表。そして、翌年のレコード大賞<ベストアルバム賞>を受賞するアルバム『We are』
を11月に発表。特筆すべきはこのアルバムでレコーディング・エンジニアのビル・シュネーを起用したことだ。すでにTOTO 、ボズ・スキャッグス、スティーリー・ダンなどのアルバムを手掛けていたビルにエンジニアを依頼したことが、オフコースのサウンドづくりに大きく影響したことは周知の事実だろう。オフコースはついに日本のPOPシーンのトップ・グループに君臨したのである。その一方で、オフコースはさらに小田のカラーが強くなり、7年間、二人三脚で突っ走ってきた鈴木の立ち位置が揺らいでしまった。鈴木は近年オンエアされたテレビ番組の中で、“「さよなら」という曲によって小田の存在が大きくなりすぎて、自分の居場所がなくなってしまった”と話している。過去、大半のシングルのA面に小田の曲が採用されていたのは、メンバー、スタッフの正当な意思評価であったので、そこに遺恨はなかったということなのだが、この「さよなら」の大ヒットのおかげで、新たなファンの印象が“小田和正のオフコース”という決定的なイメージとして出来上がってしまった。そして、鈴木は1980年の年末に「オフコースを抜けて違う音楽をやってみたい」と小田に伝えることにる。
オフコース『We are』
オフコースが“世の中の中心”だった時代
1981年1月、『We are』のライヴツアーで4日間の武道館公演を行う。6月にシングル「I LOVE YOU」をリリース。オフコースの人気は絶頂期に入っていた。
今まで一切、テレビ出演をしてこなかったオフコースが歴史的なテレビ出演をすることになる。1月の武道館ライヴの映像が使用されたNHK教育テレビ<若い広場 オフコースの世界>(このコラムの序章で紹介)が翌年1982年1月にオンエアされた。私はここまでのオフコースの歴史を知ることなく、この番組にくぎ付けになってしまった。この番組の冒頭で先述の武道館公演の模様が映し出されるのだが、私は「日本の最先端の音楽とはこういうものなんだ」と、思い知らされてしまった。
この番組の中で制作過程を追ったアルバム『over』はその時すでに発売されていた。私はオンエアされた翌日に2枚目のベストアルバム『Off Course Selection 1978-81』
を手に入れ、そして数日後『over』を買いに走った。この時点ですでに“5人のオフコース”は終わりを迎えようとしていたことなど知る由もなく。
オフコース『over』
We are, Over Thank you
そして、1982年、オフコースはアルバム『over』のライヴツアーを開始する。高校3年生だった私は、とにかくコンサートチケットが欲しい一心で、チケット販売日を心待ちしていた。発売当日は土曜日。授業後、学校近くの公衆電話からチケット窓口に電話をかけ続けるも、あえなく受付終了。チケットを手に入れることはできなかった。
それでも、私はなんとか武道館ライヴを体感したいと思い、友人を誘って、フィルム・コンサート<Off Course Concert 1982.6.30>のチケットを手に入れ、その年の冬、名古屋市郊外の市民会館に足を運んだ。内容は想像以上に感動的なもので、「言葉にできない」の演奏中に流れるひまわりの風景は今でも目に焼き付いている。
同年9月、TBSテレビ特別企画<NEXT>がオンエアされ、ついにオフコースが民放に登場する。この1982年はオフコースが当時の日本の音楽文化の中心だったといっても過言ではないくらい、すさまじい影響力だったのである。そんな時代を象徴するエピソードを紹介しよう。
当時、私は受験を控え、某予備校に集中講座を受けに行っていた。ある日、講義中にこっそりと隣の席から紙が回ってきたのである。そこにはこう書かれていた。「私たちは真剣にオフコースの解散中止を訴えるために署名活動をしています。ぜひお名前を記入してください!」そこにはびっしりと生徒たちの名前が書き連ねてあったのだ。
オフコースの世界に連れて行くよ!『BL MUSIC クロストーク vol.04』
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