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マイルス・デイヴィス『ジャック・ジョンソン(Jack Johnson)』:J.マクラフリンのギターとH.ハンコックのオルガンが肝


マイルス・デイヴィス『ジャック・ジョンソン』

有名なマイルスの名言「お望みなら世界最高のロック・バンドを組んでみせるぜ」
いつの発言なのか分からないが、『ジャック・ジョンソン』のキャッチ・フレーズとしてよく使われるようだ。
しかしながら多くの方がご存知のように、このアルバムはロック・アルバムを作ろうと意気込んで制作された訳ではない。ドキュメンタリー映画に使用するための音楽を依頼されたマイルスが、スケジュールの都合上新たにレコーディングを行うのは無理だったため、テオ・マセロに依頼して未発表のセッション音源を編集して形にしたものだ。

それで、使われた音源というのが『イン・ア・サイレント・ウェイ』の一部を再利用するなど、とにかく急いで作った感がある。それでも旧A面の「ライト・オフ」は奇跡的な傑作として仕上がっている。この曲とB面の再利用部分以外の音源は、マイケル・ヘンダーソンを今後の新たなベーシストとして迎えるかどうか試すためのオーディションを兼ねたジャム・セッションを編集したものと言われる。
実際、曲がスタートした瞬間、ビリー・コブハムはハネないビートを叩いているが、すぐに気が付きシャッフルで進行していく。何も決め事をせずに即興で行われているのが分かる。
ハービー・ハンコックがオルガンで参加しているのも珍しい。そのプレイ自体もぶっ飛んでいて曲の目玉の一つになっているのだが、参加した経緯が面白い。もともとセッションに参加する予定はなかったのだが、自分の新作『ファット・アルバート・ロトゥンダ』をマイルスに届けるためにスタジオに立ち寄ったところ、強引に参加をさせられたという。部屋にあったオルガンはハービーは使った事がなく音色の作り方も分からずに(何とか間に合わせてか?)ジャムに加わったそうだ。

そして当時のロック少年たちを魅了したのは、やはりジョン・マクラフリンの切れ味最高の鋭いカッティングだろう。こんなにシンプルに弾きまくるマクラフリンも珍しい。「ライト・オフ」のセッションは1970年4月7日だが、後にマハヴィシュヌ・オーケストラを組む事にになるマクラフリン〜コブハムの顔合わせはこの時が初ではなく、ロスト・クインテットでのツアーの後、1969年年11月19日のセッションから共演している。(「グレイト・エクスペクテイションズ」「オレンジ・レディ」「ヤフェット」「コラード」を録音)そしてこのセッションから『ジャック・ジョンソン』でサックスをプレイしたスティーヴ・グロスマンもウェイン・ショーターに代わって参加していた。『ビッチェズ・ブリュー〜コンプリート・セッション』で聴ける。

『ジャック・ジョンソン』は『アット・フィルモア』のように楽器同士のバトルがある訳でなく、それぞれのソロの時には他の演奏者はバックに徹している。もっと言うと、同じ日(4月7日)のセッションなのだが、スティーヴ・グロスマンのソロの時にはハービー・ハンコックはおらず、ハンコックが初のオルガンと奮闘している間グロスマンは参加していない。『ザ・コンプリート・ジャック・ジョンソン・セッションズ』のDISC 3には、編集されていないそれらの音源を聴く事が出来る。結果、非常にシンプルなアンサンブルになってロック・リスナーやロック・ミュージシャンにも受け入れられた。※アルバムのリリースは翌1971年2月24日。

by Kay-C


『ザ・コンプリート・ジャック・ジョンソン・セッションズ』

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