アルバム『ヴァン・ヘイレンIII(1998年)』は、当時久々に買った純粋なロック・アルバムだった。
リリースと同時に手に入れた記憶があるので、自分の中で新生ヴァン・ヘイレン熱が相当盛り上がっていたのだろう。すぐに「ウイズアウト・ユー」が気に入り、バンドを作って演ろうと仲間に話を持ちかけたりしていた。

※缶ケース仕様のCD
結局は実現しなかったが、熱が冷めていない頃にWOWOWでも放送されたヴァン・ヘイレンのニュー・アルバム・リリース後のツアー、オーストラリア公演。
それまで動く<ヴァン・ヘイレン>はあまり観た事がなかったが、初めて観る新ヴォーカルのゲイリー・シェローンは新鮮に映った。
個人的には歴代の中で一番好きなヴォーカル。ハスキーでパワフルなハイトーン。ほとんどビブラートを掛けないストレートな発声法。ど真ん中のロック・シンガーだと思う。テクニック的にはサミー・ヘイガーの方が上かも知れないが、吹っ切れたゲイリーの唱法は、このロックンロール・バンドに合っていた。
オーソドックスな衣装や指パッチンなどのアクションなど、ちょっとオールド・ファッションな部分もあり、一風変わった個性ながらエディとバランス良いコンビネーションでバンドを牽引しており、すでに堂々とソロ・シンガーとしても活躍出来る正真正銘のエンターテイナー。観客席まで降りて行って階段を転げ回るのには驚いた。例えが良くないかも知れないが、キース・ムーンのヴォーカル版といった所か。この生粋のロックンローラーはヴァン・ヘイレンに同化していたと思えたので、この後すぐに脱退してしまったのは残念でならない。
それにしてもバンドの一体感が凄い。
エディの兄アレックスが叩き出すヘヴィなドラミングは、まさにバンドの推進力。重心の安定した力強いビートがあっての<ヴァン・ヘイレン>だと、映像を観て改めて実感する。グルーヴのカラーを生み出しながらバンド全体のサウンドを引き締めている。
動画では病室から抜け出して来たような格好で首にはギプスをしている様だが、事故か何かあったんだろうか…。
そして、マイケル・アンソニーの鍛え抜かれた身体から弾き出されるパワフルな重低音。ベース・プレイヤーなのに時折ライト・ハンド奏法を見せるなど高度なテクニックも兼ね備えている。ベースの腕前も確かだが、マイケルのバッキング&リード・ヴォーカルは仰天物だ。リード・ヴォーカリストとしても充分通用するパワフルで良く通る声が素晴らしい。
主役のエディについては、もはや語り尽くされているだろう。過激なのに艶のある音色が心地良過ぎる。自由奔放でありながらテクニカルなプレイ。身体の中から次々と湧き出すアイデアがエディ自身にも抑えきれず、その激しい衝動が聴き手にダイレクトに伝わる。エディのギターを体感した我々は高揚感を味わずにはいられない。この動画ではグレーの衣装だけが唯一残念な点だ(笑)。
ジミ・ヘンドリックス以来のギター革命を笑顔で成し遂げた愛すべき天才に献杯。
by Kay-C
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